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投資マネーの流入で上昇が続く不動産価格。「バブル」との指摘も出る中で、価格に対する見方は様々だ。金融機関を監督する金融庁の遠藤俊英・監督局銀行第一課長と、不動産証券化の最前線に立つモルガン・スタンレー証券の赤井厚雄・証券化商品部マネージングディレクターに見解を聞いた。
――不動産投資の過熱化を懸念している印象だ。 「今のお金の流れは不動産ファンドを通じていることに特徴がある。ファンドとは不動産投資信託(REIT)と私募ファンドを指すが、これらの規模は昨年末で十一・五兆円。二年前と比べると、ファンドを通じた不動産の残高が三倍近くに膨らんだ計算だ」 「ファンドに融資しているのが銀行。融資額も短期で非常に大きく伸びている。不動産ファンドは債務不履行を起こしたことがなく、銀行にとってはリスク管理の実績がない。銀行は未知の分野に突っ込んでいるともいえる」 ――「監督方針」で銀行にリスク管理の徹底を求めたのもそのためか。 「本当にこの価格でいいのか、銀行が物件を実際に調査して考えて欲しい。審査部やリスク管理部門が冷静な目で判断できるはず。そういう体制がうまく回っているかを監督・検査を通じて見ていきたい」 ――収益還元法で導かれた価格は『適正』との声もある。 「収益還元法も必ずしも合理的とは言えない面がある。足元の賃料が据え置きか伸びていないのに賃料の上昇期待があれば、期間の純収益がほとんど上がらなくても還元利回り(キャップレート)が下がる。それで不動産価格が上がる」 「根拠があって収益還元価格の適切さを説明できるならいいが、願望を織り込んでいるなら、価格の妥当性を疑わざるを得ない」 ――今の不動産市場は「バブル」だろうか。 「企業業績が良くなり、首都圏にヒト・ビジネスが集中し始めている。オフィスビルが建ってそれがすぐに売れる状況だ。外資も入ってきてますます過熱する状況にある。だからこそ『監督方針』を発表した。バブルの定義を慎重にしないといけないが、今の不動産はやはり通常の状態では無いと思っている」 (聞き手は中西豊紀) ――地価の局地的な急騰には「バブルではないか」と意見もある。 「収益性を無視して値上がり期待だけで不動産を購入するのがバブルと言える状態だ。もっとも、大きな値上がりは東京・表参道など人気のある一部の物件だけで、主要都市の商業地の地価はピークから約八割値下がりし、そこから数%程度上昇したにすぎない」 「不動産株などに比べ地価の上昇率はまだ低い。収益還元法によって価値を計る方法が定着し、根拠のない期待にはお金を出さなくなっているからだ」 ――上昇はまだ続くか。 「上昇幅は一律ではなく、取得者の価値を高める能力で決まる。賃料を上げたりテナントを集めたりして『汗』をかく必要がある」 「還元利回りでみると東京の丸の内や大手町などでは、Aクラスのオフィスビルで現在二%台後半。物件価格の上昇で二―三年前に比べ〇・七五%程度低い。これら中心部では利回りはもう下げ止まった(=地価上昇はピークを迎えた)とみている」 ――不動産の値上がりは海外からの投資資金の流入も一因と言われる。 「実際はそうでもない。海外の年金基金など説明責任が厳しく求められる資金は日本の不動産への投資が難しい。海外の資金流入が本格化するには不動産市場の透明性が必要だ」 「米国では証券化を前提にしたノンリコースローン(非そ及型融資)の年間融資額が国内総生産(GDP)比で二%ほどあるのに対し、日本は〇・二%程度。これらの資金は不動産の付加価値向上につながる」 ――金融庁は金融機関の不動産向け投融資への監督姿勢を強めている。 「本来の不動産投資のあり方にかなうので歓迎すべきだ。同時に、しっかりした貸し手やファンドが正当に評価される枠組みを作ることも考えないといけないのではないか」 (日本経済新聞)
by yurinass
| 2007-03-19 08:17
| 経済状況記事
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