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伝統ある日本酒ブランドは守りたいが、後継者難や資金不足で厳しい場合は外部に経営を委ねる選択肢もある。その専門会社が登場した。
人材派遣大手のスタッフサービスグループは子会社のスタッフサービス・インベストメント(東京・千代田)を通じて酒蔵再生ビジネスに取り組んでいる。すでに富士高砂酒造(静岡県富士宮市)や住乃井酒造(新潟県長岡市)といった昔ながらの技術を守る四つの蔵元を買収した。 インベストメントには証券会社や地方銀行などから酒造会社の買収話が舞い込み、すでに約三十件に達した。「買収する基準は製品の品質が良いかどうか」(瀬川勲取締役)で、社員が素人の感覚で酒利きをし、十点満点で八点の評価を受けることが最低条件。買収金額は酒蔵の抱える借金込みで一億―二億円程度が相場という。 同社は会計やマーケティングの専門家を蔵元に送り込み、経営支援する。買収した四社のうち、社長を送り込んだのは一社だけ。蔵元の経営者は地元の名士が多く、作り手の管理や独自の商習慣など素人では分かりにくい点も多い。このため、経営者の派遣は「要望があった時だけ」(瀬川取締役)が基本姿勢だ。 買収後に投資がかさまないように既存設備の査定には力を入れる。「とにかく数字で結果を求めてくるが、酒造りができなくなるよりはまし」と買収されたある蔵元の関係者は打ち明ける。 販売面では、傘下に収めた蔵元のマーケティングを担当する子会社、インター・セラーズ(東京・千代田、津端諭社長)が支援する。七人の営業担当者が蔵元の商品を、首都圏の飲食店や酒販店を飛び込みで売り歩く。買収した四社の売上高は単純合計で約十二億円。今後も買収を進め、〇九年三月期をメドに売上高四十億円を目指す。 「酒造会社の淘汰が進むほど商機が広がる」と瀬川取締役は話す。二〇〇五年度の日本酒の課税数量は約七十三万キロリットルで、十年前に比べ四五%近くも減った。ただ、前年度比では三・一%と減少幅は縮まっている。瀬川取締役は「日本酒事業は粗利益が高く、うまくやれば営業利益率で一〇%は堅い」と自信をみせる。 中小蔵元にとって悩みの種は年産千三百キロリットル以下の蔵元に適用される優遇税制の廃止。期限は〇八年三月末で、業界団体は継続を国に訴えているが、先は見えない。外部に経営を委ねる蔵元が増える可能性もある。
by yurinass
| 2007-03-19 08:07
| 経済状況記事
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