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大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合し、国内の百貨店では売上高首位のグループとなる。ただし規模の拡大が直ちに百貨店の生き残りを保証するわけではない。過去の経営体質からの脱皮が不可欠である。
百貨店の売上高は一九九一年に比べ二割も減っている。少子高齢化が進み、ショッピングセンターや高級ブランドによる独自店の開設などで競合店が増えたうえ、百貨店自体も衰退の原因を抱えていたからだ。 個別の店舗ごとの仕入れ、委託販売、派遣店員が、日本の百貨店経営の特徴だった。有力ブランドを持つ納入者が出店する店舗を選び、商品を回す優先順位を決める。返品自由とするかわりに小売価格を納入側が決める例が多く、納入側が人件費を負担する派遣店員が店頭に目立つ。 同じ衣料品販売でも「ユニクロ」のように自ら製品を開発、生産し価格も決める製造小売型店舗とは仕組みが全く異なる。一九六〇年代に広まったこの商慣行は、百貨店にとってリスクやコストを下げるうまみがあった。だが、客は「価格が高い」「特定の商品を強引に勧められる」などの不満を募らせた。百貨店の社員は消費の流れに疎くなり、百貨店への消費者の支持も薄れてきた。 例外が、個人消費者を主な顧客とし、トレンドに敏感な伝統を持つ伊勢丹だ。同社では仕入れ担当者が商品の発掘に力を入れ、自らのリスクで発注する割合も高い。ブランドの枠を超えた売り場づくりも進めた。一方で、長年、法人向けの外商部門に大きく依存してきた他の老舗百貨店はバブル崩壊後の企業の経費削減の影響で勢いを失い、伊勢丹独り勝ちといわれる状態になっていた。 大丸は近年、本部集中仕入れを進めて商品調達コストを下げ、派遣店員やパートの活用によって人件費も削減し、経営を立て直してきた。 松坂屋との経営統合で、この路線は加速するだろう。それに加えて、より多くの消費者をひきつける力が問われる。西武百貨店、そごう、三越など、過去に全国チェーンを目指しながら思い通りの成果を上げられずに挫折した百貨店も多い。他社のてつを踏まないためにも、消費者と視線を共有し、売り場の魅力を向上させるセンスと努力が必要になる。 (日本経済新聞)
by yurinass
| 2007-03-19 08:00
| 経済状況記事
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