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最高値更新が続くステンレス鋼板市場で、商社など流通業者が三つの悩みに直面している。主力のニッケル系鋼板で建材業者のステンレス離れが進み始めたほか、最終製品に価格転嫁できない加工業者の信用不安も表面化。さらに大手メーカーが口銭体系を見直す動きもある。コスト負担が増し、流通業界再編の引き金になるとの見方も広がっている。
「ドアノブやサッシ部品でアルミなどに素材を転換する動きが目立ち始めた。今後一気に加速するかもしれない」。都内のステンレス専門商社の幹部は顔を曇らせる。 ステンレスの内需のうち、建材や金物向けは一〇%強とされる。特に店売り(一般流通)市場での調達が多い。従来ステンレスが主流だった壁や玄関周り部品の市場では年明け以降、アルミや亜鉛めっき鋼板などを採用する動きが拡大している。パソコンや携帯電話に使うバネ材でも樹脂バネが広がってきた。 統計上もステンレス離れの兆しが読み取れる。全国ステンレスコイルセンター工業会(東京・千代田)がまとめた一月末のステンレス鋼板のコイルセンター(鋼板加工会社)在庫は前月末比一・三%増の十万七千六百三十六トン。五カ月連続で前月末実績を上回った。 ステンレス鋼板の価格は上昇の一途をたどっている。指標となるニッケル系SUS304(二ミリ)の市中価格は東京、大阪とも一トン五十六万円。一年前に比べて八六%高い。原料となるニッケル地金が、欧米の旺盛な需要や投機資金の流入を受けて同様に約三倍に値上がりしたためだ。 鋼板価格の高騰は需要家であるステンレス加工業者の信用不安も生んでいる。市中価格は一年で一・八倍になったが、加工業者が最終製品に価格転嫁できたのは「その半分程度」といわれる。「一部の需要家に対し、毎月の販売枠を半分に減らした」「手形決済の期間を縮めた」「現金払いに変更させた」など、独自の防衛策を講じる流通業者も増えている。 最大手の新日鉄住金ステンレス(東京・中央)が四月契約分から大手流通向け口銭体系を見直すことも不安材料と映る。従来は定率の口銭を支払っていた。今後は一定額を設定し、これに上乗せする形でデリバリー管理や与信管理など流通業者の機能査定分を支払う方式に改める。現行よりトータルの口銭が減る商社もあるとみられ「追随するメーカーもありそう」(流通業者)という。 需要家のステンレス離れと信用不安、メーカーからの選別。三重苦にあえぎつつ、「ニッケル価格が反落すれば在庫の含み損を抱える」という不安も頭をよぎる。流通業者の苦悩は続きそうだ。 (日本経済新聞)
by yurinass
| 2007-03-07 07:09
| 経済状況記事
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