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「東京でメガバンクによる再建支援を見てきた」。昨年七月、東京から本店に戻った北陸銀行の南部勝・融資第二部長は話す。最初はメガバンクのドラスチックなやり方に戸惑いがあったが、次第に考え方が変わった。東京で取り組んできた再生支援を今度は地元に根付かせようと走り回る。
二〇〇三年に民事再生法の適用を申請した子供服店のピーター商事(福井市)。当時社長だった、創業家の桜井秀伸氏は都市部で先行する経営再建の手法に活路を求めた。「地元の弁護士を訪ねても自己破産を勧められるだけだった」ためだ。 〇四年には日本政策投資銀行から、事業再建中の企業向けのつなぎ融資の取り付けに成功。在庫を担保に五千万円の融資枠設定を受けた。小売業の再生支援を手掛けるキアコン(当時)が在庫の評価や監視を請け負い、中小企業が動産担保融資を活用する先行事例の一つになった。 再建支援の「道具」は増えている。債務を株式化するデット・エクイティ・スワップ(DES)、貸出債権を返済順位の低い劣後ローンへ転換するデット・デット・スワップ(DDS)などは地方企業の再建でも活用され始めた。 □ □ 「キャッシュフローのプラスが見込める会社なら、DDSも(銀行にとっての)自己資本と割り切っている」(北陸銀)といい、「経営改善した段階で、再び優良な貸出先になってほしい」との期待を込める。 〇三年に設置された中小企業再生支援協議会による成果も積み上がってきた。北陸三県の支援協には昨年十二月末までの累計で五百六件の相談があり、八十一件の再生支援計画策定にこぎ着けた。福井県の支援協は弁護士や公認会計士などの専門家を当初の十七人から二十三人に増やすなど、支援体制を強化している。 ただ、地方では企業再生が完全に「市民権」を得たとは言い難い。「他の金融機関に、なぜ債権放棄までするのか、とみられることもある」と南部氏。地域金融機関にはなお「外科手術」を伴う私的整理にアレルギーが残る。中小企業の経営者間でも「『再生』というだけで後ろ向きにとらえる風潮が根強い」(金融関係者)。 □ □ だが、経済の変化の速度は増している。南部氏は「ある程度元気があるうちに手をつけないと、もっと経営状態は悪化する」と指摘し、福井県再生支援協の深川明志プロジェクトマネジャーも「早期診断」の重要性を強調する。 都市部と地方では再建を後押しする組織や人材の「格差」も残る。倒産処理を多く手掛ける淀屋橋・山上合同大阪事務所(大阪市)の軸丸欣哉弁護士は「担保権の消滅手続きなどは地方では事例が少なく、裁判所も手探りでやらざるをえない。東京や大阪のような倒産処理を扱う専門部署がなく、割ける人員も限られている」と話す。 バブル期に端を発する倒産はおおむね一段落したが、中小・零細企業の経営状態は予断を許さない。「(二十一日に日銀が決定した)今回の利上げが中小に与える影響は大きい。多くの金融機関は不良債権処理は峠を越したというが、まだ処理が滞っている案件も多い」(関係者)との見方も根強い。 公共事業の縮小に苦しむ建設業者の倒産は衰える気配はない。大企業と中小企業の業績格差を指摘する声も多い。中小も人口減少や国際競争にさらされる時代。企業再生を支援する「セーフティーネット」の拡充は地方にこそ求められている。 (日本経済新聞)
by yurinass
| 2007-02-24 07:32
| 経済状況記事
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