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by yurinass
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新銀行東京の経営挫折に学ぶ銀行スコアリング融資の反省点

(1)新銀行東京の経営はなぜ挫折したのか?
 資金繰りで苦しむ中小企業の緊急救済手段として石原都知事の肝入りで設立された、実質東京都立銀行ともいうべき新銀行東京の開業以来の経営不振は、貸し主と借り手の両者に多くの警告と教訓を与えるものとなった。
 この銀行の経営が挫折し、設立以来一度の好業績を示すこともなく赤字を累積し不良債権を増嵩させて苦境に陥った要因には、先ず第1に開業に漕ぎ着けた時期が、バブル経済破綻後の長期不況からようやく立ち直り不良債権処理の目途もついたので、それまで中小零細企業への貸し渋りをしてきた大手銀行を主体とする多くの銀行が、一転して優良中小企業への融資に積極的に乗り出すといった金融環境の変化があって、時宜を失し悪かったことであった。
 しかしそれとても、有識者の諫言に謙虚に耳を貸さず、理念先行で強引に拙速設立を画した石原都知事の時流見通しの甘さと、設立準備役員の人選ミスの責任は免れない。
 この人選については、石原都知事がめざした全く新しいタイプの銀行設立というには不適切な、中小企業金融業務に精通しない実務担当役員、しかも都知事と親交のあったお友達と都庁の天下り出向的人選が主体の組閣であったこと、新規採用行員が外資系投資銀行や大手銀行出身の上・中級幹部、中小金融機関リストラ組主体の一般行員といった雑多でまとまりが悪く質的にも劣る者が多かったこと、現場管理職に垂範管理や適切な指示・指導能力が欠如していたこと、採用後の従業員教育訓練が全くといっていいほど実施されていなかったこと、自己保身的で事なかれ主義と上司の顔色だけを伺う要領屋社員がはびこり、創立準備段階から中長期経営計画が杜撰で、申請書類の改竄や、業務実態の隠蔽体質があり、それを諫言しようとする正義感の強い有能な良識派が煙たがられ、讒言や卑劣な組織ぐるみのハラスメントで排斥され、退職を余儀なくされるという陰湿な組織風土だったので、職場の士気が極度に低かったこと、畑違いの業界出身の初代社長が全く無能で、これを補佐するというよりむしろ実質的支配をする都庁出向役員も、民間銀行経営体験がないので実務に暗く、役人気質が払拭出来ず、親方日の丸感覚で都の出資金を食いつぶしたことなどなど、まさに企業は人財なりの逆を行く、悪い組織の典型そのものであった。
 その他に、いかにコンピューターバンキングによる省力経営を標傍しているとはいえ、営業現場でほとんど行員の生の声が聞かれず、活気が感じられなかったこと、電話帳に銀行の所在地や電話番号が掲載されていないなど、銀行の姿が全く見えず、頭と足で積極的に業務推進をする姿勢が利用客に明確に伝わらないことなどなど多々ある。
 その上に、銀行融資効率化のビジネスモデルとして、近年急速に導入する中小企業機関が増え、新銀行東京も例外でなく採用してきた「スコアリング融資」という制度にも弱点と、運用上の未熟さという問題があったことは否定できない。
 本年4月に、創業社長が退任させられ、東京都からの400億円の追加救済出資の条件として都が監視体制を強めることになったが、瀕死の重症にあり、信用を失墜し、もはや社会的存在価値も無くした新銀行東京の本格的自主再建は非常に困難と考える。
(2)スコアリング融資と、普及してきた背景
 さて、比較的に信用調査体制が整っている大手銀行でさえ、信用リスクが大きいからと手を出さなかった無担保、無保証人、融資諾否即決をセールスポイントとしたスモールビジネスローン、ベンチャー支援融資などのセットローンを、中小地域金融機関で積極的に売り出そうとする傾向がここ5~6年前から急速に高まっていたが、昨年にアメリカでサブプライム・ローンの不良債権化増大に起因する金融不安が発生し、世界経済にも大きな波紋が広がり、この真相と実態被害は未だに明確にされておらず、問題の完全解決には至っていないことから、最近になってこの種機械的なスコアリング融資の是正が問われることとなった。
 簡単に専門用語の説明をすると、セットローンとは、商工ローンなど、予め設定されている条件を満たす対象者に対する、比較的小額で短期の、公的信用保証機関の保証付を原則とする融資のことで、万一回収不能となった場合、信用保証協会がこの大部分の一定割合を代理弁済してくれるので、貸し手の銀行としては債権保全上からも安心でき且つ信用審査も簡便にできるので効率的ということで、近年多くの銀行で活用され普及している融資手法であり、いわば融資の既製服版である。
 スコアリング融資制度とは、主として中小企業や自営業者向けの、比較的小額で短期な運転資金融資を目的とする簡便な融資手法のことで、融資申込書に予め設定されている数十項目の質問事項に、借り手が自主申告回答し、それを数値化したスコアをコンピューターで処理し、それを融資諾否の判断資料にしようとするもので、貸し手の銀行にとってはきわめて能率的で簡便、融資業務の省力化・効率化と、信用供与の諾否決定を早め、顧客サービスの向上にもなる融資手法とされ、金融庁でもこれまで地域金融機関に推奨してきたが、ここにきて前述のような理由から曲がり角を迎え、金融推奨モデル項目から除外することとしたので、それに連れこの融資の取扱いを中止する銀行も出てきた。
 スコアリング融資というビジネスモデルは、元来アメリカで発案され世界中に普及発展したもので、消費者金融や商工ローンで積極的に用いられてきた。
 日本でも同様、融資額が比較的に小口であるが、信用審査に手間がかかり期間を有する一般的融資より与信諾否の決定が早くなるので、多少金利が高くても借り手がつき取引顧客数の増加が図れ、信用リスクの分散や収益の増大に有益、行員の審査能力の劣勢もカバー出来ると考える中小金融機関で積極的リテール融資の推進策として採用されてきた。
(3)スコアリングによる機能的融資の問題点
 しかしアメリカのように企業のみならず個人客に至るまでの、平素からの情報収集や信用管理体制が整っており、スコアリング項目の設定やその評価のノウハウが蓄積されている国においてさえ、今回サブプライム・ローン(所得水準の低い顧客対象の住宅ローン)の焦げつき問題が発生したように、信用管理や債権保全上のリスクは完全にクリアーされたものではないことが露呈した。
 ましてやこういった制度を導入して成果を発揮するための基本前提となる、日常からの市場調査や信用調査、顧客信用管理体制の整備が不十分で、それ向きの従業員の教育訓練もせず、ノウハウの蓄積もなしに、アメリカの表面的なシステムだけを、伝統的で保守的な日本の金融大革命を目論むアメリカの威圧的要求に応じて拙速導入し、その真髄や魂までは受け止めなかったわが国では、もともと無理で不安と危惧する向きもあり、ゆえに大手都市銀行などは、その導入に時期尚早と慎重な姿勢をとってきた。
 消費者金融業界では、目下、もちろん当初はアメリカのシステムを見習って、大手業者では約50項目に及ぶ信用審査項目の設定や応対マニュアルづくりをし、従業員教育を繰り返し実施した上で導入したこのスコアリング貸付が主流となっており、身分証明書さえ提示すれば、無担保、無保証人で、即決貸付に応じてもらえるというが、こういうシステムを採用するまでには、数十年に及ぶ消費者ローン業務の体験や、失敗から得たノウハウの蓄積があったのである。
 しかも一顧客当たりの貸付額は銀行業界よりはさらに小口で短期、個別貸付限度額の設定、業界内での信用情報の管理と交換体制なども整備され、予想される貸し倒れの損失に見合う高金利や、かなり強引な焦げつき債権の回収手段を取ってきた。
 それでも予想を上回る不良貸付が発生し、信用リスク回避の難しさを味わってきたし、さらに近年、貸金業法や利息制限法の改正や違法行為の摘発が強化されたことで、経営採算がとれず、廃業に追い込まれる業者が急増したのである。
 社会の公器であり信用を重んじる金融機関が、貸金業者と同じような自己利益本位の強引な営業や、ましてやコンプライアンス・マネージメントの見地からも、違法な信用リスクの管理手法を講じることは許されず、もしこれに類似する営業姿勢をとれば、社会から非難され、これまで永年にわたって築き上げた信用と顧客の支持を失することとなる。
 こういったことは、バブル経済を煽った挙句の不良債権の増大で、銀行の経営破綻が相次ぎ、銀行が経済社会の首座から陥落した過去の苦い体験からも明らかであり、まさかその反省をもう忘れてしまったわけではなかろう。
(4)銀行融資のあるべき姿勢
 新銀行東京の挫折についても、スコアリング融資システム自体が悪いのではなく、その信用チェック項目の設定や評価能力、運用方法に問題があったという見解を表明するむきもある。
 しかし筆者は、やはり「貸すも良識なら、貸すべきでない案件や対象者に対しては、貸さないことも銀行の良識」という真理や、「1)社会公共性、2)健全・道徳性、3)安全・確実性、4)将来・発展性、5)収益・有利性」という銀行融資の5大原則を忘却し、自利至上主義や効率性本位に走り過ぎ、貸し手自らが汗をかき、借り手の現場観察調査もしない書類審査主体にするというようなこの種のイージーなローンには、どこか無責任で無理があって、リスキーでもあり、借り手のためにもならないし、本当に銀行らしい顧客サービスではないと考える。
 「お金を稼ぐには、知恵を用い汗をかき、それを使うには理性と心を大切にせよ」という先賢の名言は、永遠不変の真理であり、濡れ手で粟のぼろ儲けを狙って汗もかかずに安易にお金を得た者には、お金の大切さが体得できずに馬鹿使いをし、いつかは高転びして大金を失し、腋の下に冷や汗をかくこととなるので、好ましいことではない。
 銀行は、物的担保や保証担保で安易に機械的に金を貸して暴利を追求するだけなら、町の悪徳貸金業や単なる投資ブローカーと変わらず、金融のプロとは言えなくなる。
 書類上のデータ審査だけに頼らず、借り手事業の将来性と経営者の人物や社員の働きぶりを現場に足を運び皮膚感覚で観察調査・確認することが信用調査の鉄則であり、親身に顧客の相談に乗り、知恵を貸し情報を提供するコンサルティングサービスを通じて、自信と見識のある融資活動を展開するという原点に立ち返り、国益にも連なる将来の優良企業を育て、産業経済の発展に積極的に寄与すると言う姿勢が、今改めて銀行に要求される。
 お金だけを事務的に貸す金融業(金貸し)から、知識情報を提供する知融業(信用供与の知識情報サービス業)に進化してこそ、真の金融のプロ、良識あるエリート集団の機関として再評価され、社会的信頼を取り戻し、生存と繁栄が約束されることとなろう。



<著者プロフィール>


経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)


 幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。
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by yurinass | 2008-06-28 23:11
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