Webメモ


メモです。
by yurinass
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「借入金=資本」に金融庁がお墨付き

「創業の苦しい時に、すぐに返さなくても良いとお金を貸してくれた恩人がいた」――。そんなエピソードを語る経営者は少なくない。実は金融庁は今年度から、銀行など金融機関に対して、そんな貸し出しを増やすよう後押しを始めた。

 今年3月、金融庁の検査官が金融機関を検査する際の手引書である「金融検査マニュアル」を改訂して、銀行など金融機関に、返済までの期間が長く、株式のような貸し出しを促す仕組みを導入した。借り入れ条件が、このマニュアルに合致するとみなされた借入金は資本と認められる。

 今年1月の新聞報道では、政府系の中小企業金融公庫が、返済期限の長い「劣後ローン」を使った融資サービスを始めると伝えられた。しかし、正確には劣後ローンというよりも、資本とみなされるもの。民間の金融機関でも扱える。しかも金融検査マニュアルの対象は中小企業に限らず、資金使途にも制限はない。

 経営コンサルティング会社「ファインビット」社長で中小企業診断士の中村中氏は、この改訂を画期的と評価する。そこで、この仕組みが企業経営に与えるインパクトを語ってもらった。




中村 中(なかむら・なか)氏

中村 金融庁は、今年度からの金融検査マニュアルで、すぐには返済を迫らない借入金について資本とみなすという仕組みを導入しました。ただ、ほとんど報道されていないので、中小企業の経営者にはあまり知られていません。実にもったいないことです。

 この改訂によって、中小企業向け金融は大きく変わるはずです。株式のように、すぐに返済しなくてもすむ貸し出しに市民権が与えられ、とりわけ銀行などの金融機関が中小企業向けに柔軟な貸し出しをできるようになるからです。


株式のような借入金

――借入金が資本とみなされると、扱いが大きく変わる。これが認められるようになったのは、中小企業の資金需要が資本金のようなお金に移ってきたからだ。



中村 会計を勉強した方は、そもそも返済のない貸し出しとは、資本金に近い性質を持つことはすぐ分かるでしょう。企業の財務状況を表す貸借対照表(バランスシート)の右側にある調達項目である貸方の上の方は負債で、下は資本です。資本と負債では、会計原則が違います。資本はいわば「最劣後ローン」であって、最後に返すものです。

 金融検査マニュアルは、借入金の実態に合わせて「十分な資本性が認められる借入金は資本とみなして、融資先企業の債務者区分を査定できる」と改訂されました。債務者区分とは、金融検査マニュアルの定義で、融資を受けた企業の財務状況などを中心に、正常先、要注意先、破綻懸念先などと5段階にランク付けしたものです。

 資本のような資金には、主に創業資金のほか、業種転換資金、成長分野の育成資金、M&A(合併統合)資金、自己株式の取得資金、事業承継資金の6つがあります。いずれも資本が少ない中小企業にとっては、少子高齢化が進んで必要性が増しています。すぐには返済のめどが立たなかったり、そもそもどんな収益で返すべきお金か分からない場合も少なくありません。

 こうしたお金は資本やエクイティと呼ばれ、今まで銀行などの金融機関は絶対貸しませんでした。銀行は本来、返済のない貸し出しは扱えません。あくまで将来企業が事業によって手にするキャッシュで返済が約束され、資金使途に見合った返済財源で期日までに返済されるという、いわば「つなぎ資金」が基本だからです。間接金融で他人のお金を責任を持って預かっているのですから、貸すのは企業にとっての負債だけ。しかも負債の項目で一番早く返してもらえる優先的な貸し出しのみを扱ってきたのです。しかし、それではもはや企業の資金ニーズに対応できなくなったのです。


配当と同じく業績に応じた段階金利

――金融庁によると、資本と認められる借入金は、借り入れ条件によって決まる。そのモデルケースとして、今年4月1日から政府系金融機関である中小企業金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」が登場した。

 金融庁は「例えば中小企業金融公庫が1000万円を貸し出して債務超過を解消するのを呼び水に、他の民間金融機関も貸し出しするという使われ方を期待している」(繁本賢也検査局総務課課長補佐)という。

 債権放棄を迫られていたような銀行が、企業の負債を資本とみなされるように条件を変更したり、親会社から借り入れしている子会社の借入金が資本とみなされることも可能という。

中村 挑戦支援資本強化特例制度では、借り入れた企業の業績が思わしくなければ利息は下がり、業績が上向けば利息が上がる仕組みです。直近決算の成功度合いに応じて、9.95%、5.30%、0.40%の3区分の利率が適用されます。つまり業績の悪い企業は配当を払う必要がないのと同じように、業績が悪くなれば金利負担が減るのです。

 中小企業の新事業開始や事業再生などを対象として、貸付期間は15年。借り手企業は返済期限まで金利のみ支払い、15年後に元本を一括で返します。貸し付け金額の上限は1社当たり2億円で、2008年度は50億円分が原資として計上されました。民間の金融機関も、似たような条件で貸し出しが可能です。従来から続いている借り入れについても、金融機関が資本性を持たせる契約に転換すれば、資本と認められる場合もあります。

 借り手の企業の経営者はこれまで、格付けが下がったという理由で銀行から金利を引き上げられても、泣き寝入りしていたかもしれません。しかし、経営者が金融検査マニュアルをうまく活用すれば、銀行員に対して資本とみなされる貸し出しがあると、銀行と交渉する余地が非常に広がるのです。

――「挑戦支援資本強化特例制度」の対象企業には「地域経済の活性化に資する等一定の要件を満たす」という条件を掲げられている。中村氏は、この条件は特に画期的と指摘する。

中村 素晴らしいのは、対象企業の条件に「地域経済の活性化に資する」とあることです。これは、対象企業の財務状況だけが貸し出しの条件ではなく、その企業のある地域全体を評価して、地場産業や地元経済を支えるような企業ならば、地域の実情に応じて貸し出すと書いているのです。

 例えば、ある地域にある企業の地元に仕入れ先や販売先が多くあり、大勢の従業員を抱える中小企業は、再生の可能性があるのに経営が行き詰ってしまうと、地域全体の経済を衰退させてしまいます。地域金融機関が、こうした企業に貸し出しができれば延命を図れます。これを「地域の面的再生」「エリア審査」と呼びます。

 銀行は、融資を審査する際に、まず定量分析で財務状況の実態を調べて、仕入れや賞与資金などの短期の資金、設備投資などの長期の資金、財務キャッシュフローを見ます。さらに定性分析によって、企業決算に表れない営業力や販売力といった強みを見ます。それでも不安な場合に、初めて担保が必要になります。担保にも物的な担保のほか、売掛金などを担保にする流動資産担保、財務制限条項(コベナンツ)もあります。それでも難しい場合は、企業の地域への貢献度で見ることができるのです。

――こうした仕組みが導入されたのは、これまでの金融政策の流れがあったからだ。

中村 日本が右肩上がりの経済成長をしていた頃は、手形などで資金を集めやすい時期がありました。なおかつ、いったん貸し出したら手形を書き換え続ける「コロガシ貸出」や、ほとんど元本を返済しないで利息だけ払うというのが半ば常識でした。

 ところが1999年から金融機関は、貸し出しが回収できない場合のリスク率で決まる企業への格付けに応じて、引当金を積むよう迫られました。金融検査マニュアルが整備されたり、金融機関の自己資本比率を算出する際に適用される国際的なルール「新BIS規制(バーゼルII)」で引当金の積み上げに厳格な運用が求められているからです。例えば、格付けが下がって債務者区分が破綻懸念先に引き下げられると、銀行は70%もの引当金を積まなければなりません。1億円貸すのに、1億7000万円も必要だと銀行も採算が合いません。こうして中小企業の間で、「コロガシ貸出」のような借り入れの返済を突然迫られる「貸し剥がし」が一時問題になりました。それで中小企業への貸し出しが減少してしまったのです。

 もともと中小企業を対象にした金融検査マニュアルの別冊には、不良債権の回収策の1つとして「資本的劣後ローン」というものがありました。借り手企業の再生支援策の1つの方法として、銀行が債務を株式化するDES(デッド・エクイティ・スワップ)が進められました。ただ中小企業は銀行が自社株を保有するのに抵抗があり、銀行も信用力の低い企業の株式を多くは持てません。そこで銀行が負債を資本的劣後ローンと交換して銀行の勘定科目ではローン・貸し出しとなるDDS(デッド・デッド・スワップ)によって、債務超過を回避するようになりました。ただDDSは、将来の返済義務を免れるものではありません。借り手にとって資本ではないのです。

 もともと金融検査マニュアルには、実態に即して資本に近い借り入れであれば、資本とみなすという基本的な考え方がありました。ならば債務を保有したまま金利だけしか受け取ってない貸し出しは、実態として資本とみなせるのではないかと考えられるようになりました。

 そこで「資本性のある借入金」が登場し、金融検査マニュアルの本体に明記されたのです。問題は、こうした一連の流れが分からないと、地域金融機関でさえ、金融庁が担保保証に過度に依存しない貸し出しをやれ、中小企業への貸し出しを増やせと言っていることが分からないのです。ビジネスのグローバルスタンダードである会計と同様に、新BIS規制のように世界と連動して金融政策が体系的に作られていることを理解できなければなりません。

 次回は、金融行政の流れを理解することがいかに経営に不可欠か解説しましょう。
[PR]

by yurinass | 2008-05-21 21:04
<< 7兆円を突破したREIT運用資... 07年度 大手生保の個人向け保... >>