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証券市場で世界初の金融インフラがスタート

 金融の分野で、日本が世界に先駆けて実用化するインフラが今年度から登場する。財務報告の情報言語であるXBRL(eXtensible Business Reporting Language)だ。今後、XBRLによる財務データを簡単に分析できるツールが続々登場することが予想され、個人投資家でも知らぬ間にXBRLの恩恵に預かることになりそうだ。

 有価証券報告書や大量保有報告書等の開示書類をインターネットで閲覧できる金融庁のEDINET(電子開示システム)は、今年4月以降の事業開始年度からXBRL形式の財務諸表を提出するよう企業などに義務付けた。対象は上場企業のほか、資本金5億円で出資者数500人以上の4700社以上、約3200の投資ファンドに上る。

 さらに全国の証券取引所に上場する企業の適時情報開示を閲覧できるTDnetも今年10月以降、決算短信の表紙や1枚目に当たる要約内容がXBRLで閲覧できるようになる。

 XBRLとは、売上高や売上原価といった勘定科目などをコンピューターが認識できるように設計された言語。XBRLで記述された財務諸表であれば、コンピューターがあたかも数字の意味を理解しているように情報処理できるので、例えば資本回転率や労働分配率などの財務指標も、いちいち数値を転記したり、計算式を入力しなくても自動的に計算できる。これまでは表計算ソフトに数式を設定したり、その式に数字を入力しなければならなかった。XBRLではそうした数式を定義してしまえば、あとはどんな財務諸表も自在に扱えるイメージだ。

財務諸表も簡単に英語に転換

 投資家にとっては用途に合わせて情報の加工が容易になるだけでなく、企業も財務諸表を提出先に合わせて再作成したりする手間が不要になる。財務諸表を英文に変換するのも瞬時に可能なので、日本語の壁に阻まれてきた海外投資家にとっては、XBRLが日本の株式市場を世界に開かれた市場にするという大きな役割を果たす。

 世界で最初にXBRLの実用化に乗り出したのは米国の公認会計士協会。1999年に会計事務所やソフトウエア会社で構成するコンソーシアム団体を設立し、米国会計基準に即した仕様を開発している。米国公認会計士協会の働きかけを受けて日本公認会計士協会も、2001年に日本の会計基準の沿った仕様を開発するため有志によるコンソーシアム団体「XBRLジャパン」を設立。2007年10月現在、80の企業や団体が参加している。監査法人や証券印刷会社、財務情報サービス、ソフトウェア会社、金融機関などが主なメンバーだ。

 とりわけ国内でXBRLの普及に力を入れているのは東京証券取引所だ。XBRLの参照ソフトウェアと、サンプルとして架空の上場企業の決算短信XBRLデータを提供して閲覧できるようにしている。

 米SEC(証券取引委員会)も実験的なサイトを公表している。企業が自主的にXBRL形式で提出した財務情報をインタラクティブに比較や分析できる。米国の上位500社が役員報酬をいくら払っているか簡単に比較できる例も紹介している。また、閲覧ソフトのもととなるソースコードも公開されており、コンピュータープログラムを作成できるなら誰でも分析ツールを独自開発できる。

 しかし米SECは現在、XBRLの普及に力を入れている段階で、財務諸表以外の注記部分も含めてXBRL形式での書類提出の義務化を検討中という。日本は、まず財務諸表について米SECに先行する形で義務化に踏み切った。そのきっかけになったのは、日本の国税庁や東京証券取引所がいち早く XBRLを採用したこと。2003年から東証がXBRLで記述された決算短信を受けとれるようになり、2004年から国税庁が電子申告・納税システム(e -Tax)に採用した。JIS規格にも採用され、財務諸表を扱うデータ形式としては、もはやこれ以上の選択肢はない。

未上場の中小企業にも恩恵

 しかも国税庁が採用したことで、上場企業以外でも用途が格段に広がった。例えば中小企業が銀行から融資を受ける際に、電子申告に使ったXBRL形式の財務諸表を再活用するのも可能だ。納税した企業が国税庁のサイトから暗号キーを受け取って、それを融資する銀行に渡せば、銀行は国税庁から直接データをダウンロードして納税額をチェックし、正確な審査ができる。従来、銀行は企業から電子記録媒体に記録された財務情報を持ち込まれたりすると、セキュリティチェックなどに手間がかかって受け取れなかった。しかしXBRLを活用すればインターネット上で手続きが完結する。

 当初国税庁が採用した仕様は東証などと異なっていたものの、今年9月をめどに東証や金融庁のXBRLと同じものになる。つまり企業が適時開示のために作成したXBRLの財務情報は、財務局に提出する有価証券報告書にも、電子申告にも再利用できる。XBRLの目標は同じ会計基準を使っている限り、すべての財務諸表を比較可能にすること。XBRLを活用すれば上場企業から未上場の中小企業まで、高度な財務分析が一気に可能になる。

企業人、会計士ら有志が支えたXBRL

 こうしたXBRLの利便性に着目して早くから普及啓蒙に活躍してきたのは、役所でも企業でもない。1人1人の有志の集まりだ(日経ビジネス本誌 2001年3月12日号、2002年11月18日号を参照)。2000年5月に米ワシントンで開かれた米国のコンソーシアム団体の会議に出席したただ1人の日本人が、東京商工リサーチの技術顧問である渡辺榮一氏だった。渡辺氏の呼びかけに応じる形で、現在ピー・シー・エー社長で公認会計士の水谷学氏ら有志がXBRLジャパンの設立に奔走。さらに2004年から2006年度まで金融庁に出向していた東証上場部課長の吉田幸司氏が、EDINETやTDnetへの開示のために企業が提出している財務諸表の一元化を目指し、日本の会計基準に沿ったXBRLの整備に動いた。東京商工リサーチの渡辺氏は「通常なら利害が衝突しかねない関係者や技術者が、公共の目的のために力を合わせることができた」と振り返る。

 実際、日本の会計基準に沿ったXBRLの開発は簡単ではなかった。例えば財務諸表に登場する貸倒引当金や減価償却累計額は、複数の財務諸表への書き方が認められている。そのため全てのパターンを処理ができるように設計しなければならない。当初、国税庁が導入を決める際に、日本の会計基準に沿って XBRLの基本的な仕組みを用意したのもXBRLジャパンの有志だった。東証の吉田幸司氏は「最初に、ある程度ポテンシャルを上げて山を越えなければならなかった」と言う。最終的に金融庁から開発を受託したメーカーにいたXBRLジャパンのメンバーが、約5万の勘定科目の全てに目を通し、類似した形式を集約してXBRLを設計したという。今後は財務諸表だけでなく、有価証券報告書の注記部分などについてもXBRL化を目指すという。

 株式市場を動かすのは、投資家達の自己利益の最大化。だが、そのインフラを作りあげているのは、より効率的な市場を作ろうという有志たちの情熱にあったという事実を忘れてはならないだろう。
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by yurinass | 2008-05-11 13:01
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