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ミレアホールディングス,低いROEの原因は、持ち合い株以外にもある

日本の損害保険会社で、長年指摘されてきたのが、株主資本利益率(ROE)が低いという問題だ。ミレアホールディングスも中期計画で「資本効率の向上」を掲げているが、持ち合い株式の売却はそれほど進んでいない。

 このいわゆる「政策株」の毎期の評価損益は、損益計算書の利益には反映されず貸借対照表の資本に直入されるため、その分、株主資本が膨らみ、当期純利益を自己資本で除して算出するROEを低下させる要因になっている。

 ミレアでは、貸借対照表に計上している国内株式の時価評価額、約4兆6000億円の大半が政策株という。これら株式の簿価は約1兆1400億円のため、会計上、時価と簿価の差額を毎期、資本に直接計上している。株式市場の動向次第ではあるものの、含み損益から税相当額を控除した後の2兆円以上が、ROE計算上の分母になる自己資本として上積みされる。

 世界では損保会社のROEは20%前後が普通であるのに対し、巨額の政策株を抱える日本の大手損保会社では平均5%程度なのも、政策株式が原因の1つであると言われる。ROEが低いということは、株主にとっての投資効率が悪いということであり、株式市場での競争力を損なう要因にもなる。業界最大手のミレアでは、2008年3月期のROEについては業務改革のコストがかさむためもあって、3.6%を見込んでいる。


利益成長に欠かせないM&A

 保険の世界では、国内市場は飽和状態にある。規模を生かした利益成長には海外への進出が欠かせないが、ミレアはM&A(企業の合併・買収)による攻めの経営を志向している。例えば2007年12月、国内であれば日新火災海上保険ほどの規模の損保会社である英国のキルン(本社・英領バミューダ)を1061億円で買収し、完全子会社化した。ちなみに、キルンのROEは2007年6月中間期、年率換算で14%だった。

 世界水準との比較という観点で言えば、政策株評価損益の影響がROEの算出に対して大き過ぎるため、日本の損害保険会社の収益力は見えにくい。だが欧米の保険会社には政策株のような位置づけの資産はない。

 仮に、ミレアの資本から政策株の影響を排除したROEを求めてみるとどうなるか。同社は既に、海外保険会社との業績比較をしやすくする目的で、独自の「修正利益」「修正資本」から算出した「修正ROE」8%を2015年までの目標に掲げている。本誌は、この修正数値を手がかりに2008年3月期の「本誌版修正ROE」を試算してみた。

 「修正利益」に保有株の配当益は含まれるものの、売却損益は除かれており、ミレアが2008年3月期に見込む修正利益は1641億円である。一方、修正資本は4兆5514億円と見込まれているが、ここには政策株式の税引き後評価損益約2兆2000億円が含まれている。これを修正資本から除いて計算すると、ミレアの本誌版修正ROEは、ざっくり7%程度だった。


政策株なしでも世界標準に届かず

 資本から政策株式の含み損益の影響を取り除き、かつ利益に保有株式からの配当は含まれたままで計算しても、現状では、ミレアのROEは世界水準には届かないということになる。つまり低ROEは必ずしも持ち合い株式だけが要因ではなく、収益構造や長期的な企業戦略に改善の余地があるためと言えそうだ。

 損保各社は政策株の売却を進めているが、評価損益が資本を膨らませたり減らしたりする一方、売却で新たな投資の原資とすることもでき、保有し続けていれば安定した配当収入が得られる。ROEは低くなっても、経営上のメリットはある。

 だが、「政策株」の評価損益が損益計算書に反映されず、貸借対照表上のみに計上されるのは日本の会計基準によるもので、国際会計基準では損益計算書に反映される。今後、国際会計基準を核とした会計基準のコンバージェンス(共通化)が進み、政策株の評価損益が損益計算書に反映されるようになれば、利益を大きく変動させる要因になりかねないことから、損保会社にとっては政策株式の保有メリットが薄れる可能性がある。

 そうなれば、資本の部を膨らます政策株の保有が減り、それが結果としてROEを向上させるかもしれない。しかし、欧米並みのROEを達成するには、飽和市場の国内への依存度を減らし、海外市場を開拓するなど収益構造の改革は必要になろう。

(日経ビジネス 広野彩子)
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by yurinass | 2008-03-22 09:35
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