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by yurinass
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数多くの企業再生を手掛けて分かった「ダメになる企業」の公式とは

ダメになる企業は、企業のコアが分かっていない

――冨山さんは、カネボウやダイエーをはじめ、多くの企業再生の修羅場を体験してこられたわけですが、ダメになっていく企業と生き残る企業を分けるものとは何なのでしょうか。

冨山氏(以下敬称略):  現在、日本の多くの企業は、好むと好まざるに関係なく、グローバル化の波にさらされています。これまでのように日本国内や地域の地場だけのライバル関係やビジネスの連係だけを考えていたのでは、生き残れません。環境変化から、企業経営自体が、数十年前に比べると、ダイナミックで、変化の激しいものになっています。こうした時代に生き残るポイントは、2つあります。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

 まず、企業にとってのコアを考えることです。これは、変えてはいけないものです。会社の理念かもしれないし、会社のいろいろな事業ドメインかもしれません。その企業にとって、10年、20年、もしかしたら100年経っても変えてはいけないものです。ビジョナリーカンパニーとして、本当に最後の拠り所になる部分。「企業の本当の価値」といえる、普遍的な部分です。ここをきちんと押さえておかなければなりません。

 もうひとつは、逆に、変わっていくことです。とにかく速くPDCAサイクルを回して、自分たちのやっていることを検証して、状況や環境の変化に対して、ビジネスをどんどん変化させていくことが重要です。

 この2つは、相反するものではありません。重要なことは、「変化させてはならないこと」「変化すべきこと」が存在するということを、きちんとわきまえることです。私も産業再生機構で多くの会社の再生を手掛けてきましたが、ダメな会社というのは、これらのことが中途半端になっていることが多いです。

――変化させてはならないことと、変化すべきことを見分けるのに、ポイントはあるのでしょうか。

冨山氏:  企業のコアというのは、企業にとっての価値観といったことで、「私たちはこの企業で何をやりたいのか?」ということとイコールです。これはなにも経営層だけの問題ではなく、社員1人1人がどのような思いを持って、その企業で仕事をしているのかということなのです。たとえば自動車メーカーの社員なら、「いい車を作りたい」と思って、その会社にいるのでしょう。企業のコアというのは、なにもその企業の主要な事業分野を指しているのではありませんが、どんな企業でも、まず自社がどのような環境・事業で利益を得ているのか、きちんと理解しておく必要があります。そうしておいて、自社のコアとなるものを抽出します。

――しかし、たとえば売り上げが減少して赤字が続いたなどの状況では、新規事業に生き残りを賭けるような戦略を取る企業もあるでしょう。

冨山氏:  もちろんです。たとえばですが、自社のコアがぶれなければ、事業ドメインを大幅に変更することもあり得るのです。ただ、コアを見失ってはいけません。経営者や従業員が、自分たちのコアをきちんと問い直す作業をさぼっていると、経営がぐだぐだになっていきます。企業のコアというものは、社員数の多い会社になればなるほど、どんどんと希薄になっていきます。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

 「自社はどのような存在価値があるのか。自分は何のためにこの会社にいるのか。何のために生きているのか」と存在意義を始終問い直すというのは、精神的にしんどい作業です。でも、この作業をしていかないと、ブレてはいけないときに判断を誤ってしまうのです。

 ビジネスの1シーンで考えてみて、「目の前に簡単に儲けられる仕事があるけれど、これをやってしまっては、自分たちの理念や本来やろうとしていることから外れてしまう」ということがあると思います。たとえばバブルのときの不動産投資などです。そのときに、その会社がどのように考えるか。自分たちの企業にとってのコアを考えて、踏みとどまるのか、行ってしまうのかで、企業のありようが大きく変わります。ダメになる企業は、こういった場合、踏みとどまれずに行ってしまうことが多いですね。

 企業は食べていかないといけないので、目先のビジネスに走ることも必要な場合があります。しかし、永続的に持続するビジネスを指向することも、企業にとっては重要な要素です。目先に儲かるビジネスがあるとして、多くの人を雇い入れて儲かっても、数年後解散になるということでは、企業の社会的な責任を果たしているとはいえません。

 企業経営は、「変えてはいけないもの」「変わっていくべきもの」を見極める状況に、常時直面しているものです。

――経営者からいち従業員に至るまで、企業哲学を持つ必要があるということでしょうか。

冨山氏:  たしかに、哲学や信念に近いものでしょう。こういったものを従業員すべてが共有することで、企業のコアというものが守られていくのだと思います。企業のコアに照らし合わせれば、するべき仕事、やってはいけないことといったコンプライアンス面もきちんと確立していきます。

激変する経営環境にどのように対応していくべきか

――グローバル化で全世界のプレーヤーを相手にしなければならなくなったり、国内マーケットの人口減少などにより、企業経営にとって厳しい時代を迎えていると思います。こうした状況で経営戦略を誤らないためには、企業はどのような対応をしていけばいいのでしょうか。

冨山:  企業はさまざまな経営計画や営業戦略、製品戦略、IT戦略を立てていきますが、所詮は仮説なんです。戦略を実際のマーケットに当てはめてみて、検証する。状況が変わってくれば、それに合わせて仮説を修正し、再度検証していく。ビジネスは、このサイクルの繰り返しなんです。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

 戦略はある意味机上の空論ですから、実際にやってみると、うまくいかないことのほうが多いんです。その状況をきちんと把握し、原因を検証して、再度仮説を立て、戦略を練り直すということを、永遠に繰り返しているのです。どんなに高いコンサルティング会社に依頼したって、絶対当たる戦略というものはありません。

 どんな戦略も仮説なので、実際にマーケットに出して試すしかないんです。どこかに実験室があって、事前に試せるわけではありません。このとき、仮説なき戦いをすると、まったくフィードバックがかかりません。それでは長期にわたり有効な企業経営はできないでしょう。

 立てた戦略を実際のマーケットに出してみても、ほとんどといっていいほど、うまくいかないものです。何か問題なのか? マーケットに対する読みが違ったのか? 新しい技術革新が起こったのか? 組織自体が新しい戦略に対する抵抗があってうまくいかなかったのか? などをきちんと検証して、フィードバックしていくことが必要なのです。

 私が以前いた電話会社でもそうでした。携帯電話という市場に参入するときに、当初はビジネスユースがメインだと思って基地局を設置し、料金プラン、販売チャネルを考えました。とはいえ、もしかしたら個人ユースのマーケットがあるかもしれないと思って、一部にその戦略も入れておきました。当初は、まあ当面は個人はないだろうと多くの人も思っていたのですが、実際やってみると個人市場が爆発的に増えたんです。

 この時点で戦略が外れたわけです。PDCAサイクルを回す観点からいえば、ビジネスユースから個人ユースに戦略を変更しなければなりません。これには、基地局のカバーエリアの変更から、マーケティングの変更、さらに販売チャネルの変更といった膨大な作業を必要としました。

 女性ユーザーが徐々に増えていきそうだったので、女性を取り込む戦略を考えました。でも、これはたいへんでした。その当時携帯電話の販売チャネルは、多少怪しげな店が多かったのです。女性が買うにはやはり家電量販店などでないとというので、チャネルを整備しました。でもいちばんたいへんだったのが、女性向きの端末デザインと基地局の整備でした。端末開発は年単位で時間が掛かりますし、男性と女性で携帯電話を使用する場所が違っていたのです。女性は家の中で使い出したので、オフィス街だけをカバーしていた基地局を、住宅地に拡張していかなければなりません。数年掛かりました。その間は「売れない」とかうまくいかない話ばかりで、すごく戦略がぶれそうになりました。我々だって神様じゃないですから、すべてを見通すなんてことはできません。なんとか、うまくいかなかった数年を乗り越えて、環境が整ったところで、女性向けのCMやマーケティングを展開することで、やっとうまくいくようになったのです。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

――うまく行っていない状況で、経営戦略をぶらさないでいるのは、難しそうですね。

冨山:  ダメな会社は、PDCAサイクルが実際のマーケットの変化に比べてあまりにも遅すぎるとか、検証の部分で希望的観測が多く入りすぎて、きちんとした現状認識ができていない、などということが多いです。

 設備投資や技術開発など、成果が出るまでに時間の掛かるものがあります。こういったものは、成果がきちんと出るまでは非常にたいへんです。PDCAを速く回している企業ほどマーケットに対する落ち込みがよく分かるため、この間は企業戦略が揺れる方向に強くバイアスが掛かります。このとき自社のコアを明確に持っていれば、設備投資や技術開発の成果が出るまで何とか持ちこたえることができるでしょう。こういった局面で、軸をぶらしてしまっては元も子もありません。

企業戦略の成否を左右する人的資源の問題



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

――企業戦略を誤らせる要因には、どのようなものがあるのでしょうか。

冨山:  厄介なのは、企業の組織の問題です。たとえば酒屋さんや化粧品屋さんのように昔からのチャネルが存在している場合は、新しいチャネルにシフトしていくといっても、社内の多くの人々が反対して、なかなかうまくいきません。今までやっていた営業スタイルやマーケティングを大規模量販店型に変えていくというのは、現場に出ている人たちにとっては、今までとは180度違ったビジネスにやり方を強いるため、非常に強い軋轢や反発が出てきます。

 人がトラブルのポイントになっている場合は、無意識にサボタージュしている場合があります。こういう場合、現場の人たちの話を聞いているだけでは、どんどん軸がぶれるだけで、解決はできません。こういったことを解決するには、人に対する洞察力を持つことです。ただ、人に対しての問題には、一般解というものがありません。さまざまな立場や業界で違うので、どれだけ人に対して洞察力や想像力を持てるのかが、経営陣には重要になります。

――企業は人なりともいうくらいですから、人材をどのように動かすかは非常に重要ですね。

冨山:  あと日本の企業でよくあるのは、戦略を神格化して、それに縛られ過ぎてしまうことです。たとえば「有名なコンサルティング会社やマーケッターに作ってもらった戦略だから、これがいいんだ」などと信じ切って、実際のマーケットとかけ離れたことをやってしまうことがあります。

 こんな場合は、だいたい検証部分に問題があるのです。冷静に分析しなければならないのに、見たくない現実やデータは見ずに、戦略に合致したデータだけを探し出してみてしまったりとか。

 これは非常に苦労の多い作業なんです。誰だって、苦労して作った戦略が外れたことを認識する際は、自分を否定されたような気になります。特にトップは、認めたくないものなんです。トップが認めたくないと思っていると、下のほうも情報操作とまではいいませんが、都合の悪いデータを上に上げなかったり、いいデータばかり見せるようになります。これでは、きちんと現状を分析することはできません。

 うまくいっている企業を見てみると、PDCAがきちんと回っているんです。組織全体がうまくいかないことを認めながら、きちんとフィードバックをして仕事をしていける企業というのは、組織的制度的なインフラなり精神的なタフさなりが、きちんとでき上がっています。特にトップは、精神的に最もタフである必要があります。

――トップだけでなく、一般の従業員でも、上司や経営者にいい情報を上げたがるものなような気がします。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

冨山:  経営者にとって、いい情報ほど役に立たない情報はありません。「うまくいっています」という情報を聞いても、ほとんど意味はありません。経営者にとっては、バッドニュースこそが価値のある情報なんです。

 バッドニュースを吸い上げるには、その価値を組織全体としてきちんと認識しているかどうかです。上司や経営者にバッドニュースを伝えたときに、いい顔をされなかったり、不機嫌だったりすれば、自ずとグッドニュースだけを伝えるようになります。逆に目をらんらんと輝かせて、一所懸命に話を聞いてくる状況になれば、バッドニュースも伝わりやすくなるでしょう。

 基本的に従業員側は、バッドニュースを伝えたくないものですから、どれだけバッドニュースを伝えやすいようにするかが重要です。このあたりをダメな経営者は分かってないんです。

 人事制度や評価制度を作れば、きちんと情報が伝わるようになるかといえば、そんなことはありません。制度やシステムをどれだけ整えたとしても、最も重要なのは人なんです。もし目安箱のようなものを作ったとしても、そこにメールを送る人がいなければ、まったく無駄です。何かあってメールを送りたくても、バッドニュースを歓迎しない雰囲気が会社全体にあれば、結局その情報を経営者に送らずじまいになり、発覚したときにはたいへんな状況になっているということが、往々にしてあります。経営者は、どれだけ人に対する洞察力を持っているかということが重要になってくるのです。

次代の経営者をどのように選定するか

――企業はITシステムを導入し、また社会インフラとしてインターネットが普及してきています。こういったIT革命は、企業経営、マネジメントにどのような影響を及ぼしますか。

冨山:  IT革命が波及すると、情報格差がなくなっていきます。それまでは、特定分野の情報を入手できるのは、その分野のプロフェッショナルだけでした。しかし、ITシステムが整備されることで、多くの人が情報を入手できるようになってきています。このことが、企業のビジネス環境を知らないうちにグローバル化してきているのです。どんどん競争がグローバルなものになってきています。

 たとえば地方の旅館がインターネットを使って外国人旅行者を獲得しています。ライバルは海外のリゾートです。旅館業といったドメスティックなビジネスですら、国際競争にさらされているのです。日本のマーケット自体はどんどんシュリンクしているので、成長機会も世界にしかなくなっています。今までのように資源の供給地や製造拠点として海外をとらえるのではなく、お客様のいるマーケットとして考えるべきです。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

――企業経営で誤らないために、経営者に求められる資質とは、どんなものなのでしょうか。

冨山:  重要な資質として、次代の経営者を育てられるかどうかがあります。日本の企業では、経営者をきちんと育てていない場合が往々にして見受けられます。たとえば旧来の合議制の重役会で、順送りで社長が決められていくなどというような。

 こういう事例は、これだけ厳しいビジネス環境下においては、致命的なミスといえるでしょう。ある意味、会社がダメになっていく赤信号が灯ったといえる。

 経営者を今までの重役会のメンバーから選んでいくのが本当に正しいかことなのかは疑問です。企業統治という観点から経営者を見れば、外部からスカウトしてきたっていいんです。それで、会社がうまく回っていくなら。日産をはじめ、そうして立ち直った企業の例もあります。

 もちろん生え抜きから選ぶことが重要な場合もあります。私が再生に携わったカネボウの場合でも、嗜好品の要素が強い化粧品の商品企画が分かり、かつカネボウを支えていたビューティーカウンセラーたちのことが分かるかどうか、など、さまざまな要因を考え人選していった結果、カネボウ化粧品の社長には、内部から41歳という若手の知識氏を抜擢しました。これは、外部から招聘したり内部のベテランを昇格させるより、メリットが大きいと判断したからです。

――産業再生機構では、さまざまな経歴、さまざまな職種の人がその力を遺憾なく発揮していました。こうした多様な人材をうまくマネジメントするコツは、どのあたりにあるのでしょうか。



株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏

冨山:  産業再生機構には、コンサルタントや会計士、弁護士、投資銀行、銀行など、いろいろな背景、経歴の人がいました。こうした人たちをどうマネジメントしたかですが、産業再生機構では、「部署」というものを作らなかったのです。さまざまな職種の人たちが、1つの案件に取り掛かるという、プロジェクト方式で個々の事案に取り組んでいきました。

 そうするとどういうことが起こったかというと、大喧嘩が始まりました。やり方を巡ってなどです。状況を確認するのでも、共通する言葉さえない状況でした。

 でも、こういったことを乗り越えていくことが、大切なんです。1つの企業を再生させるということは、並大抵の努力と知恵ではできません。関わる人たちに、限界ぎりぎりの努力を要求することになります。そういった局面では、さまざまなスキルを持った人が必要になるのです。

 たとえば、他の人から見ると問題でもないことを、会計士出身の人が、さも大問題のように語っていると、みんなが最初思っていたことがあります。しかし企業再生が進んでいくと、その会計士が指摘した問題が、大きなトラブルとなってきたりするんです。こうしたトラブルを乗り越えていくことで、チームの結束が強まり、みんなが実力を発揮できるようになって、企業再生といった難問題を解決していくことが可能になるのです。

 こうした多様な人材を生かしていく必要があるのは、一般の企業でも同じです。企業の軸は、シェアードバリューとして従業員すべてに根付いている必要があります。しかし、組織にいる人自体は、モノリシックではいけないんです。さまざまな多様性を内部に抱え込むことで、組織は動いていくのです。日本の企業は、人事だけを見ても、往々にして1つのステロタイプとなる人ばかりを取ってきました。こういった組織は、ある意味弱いです。生物の多様性の問題と同様に、さまざまなスキルや考え方を持つ人がいてこそ、企業は発展するのだと思います。

──ありがとうございました。



冨山和彦(とやま・かずひこ)氏

株式会社経営共創基盤
代表取締役CEO

1984年司法試験合格。
1985年東京大学法学部卒。
1992年スタンフォード大学経営学修士および公共経営課程修了。
1985年株式会社ボストンコンサルティンググループ入社。
1986年株式会社コーポレイトディレクション設立に携わり、幅広い産業分野にわたり戦略立案やその実行支援に関わる。
2001年同社代表取締役社長就任。
旧日本リースなど大規模な破綻企業の再生からアキヤマ印刷機械といった中堅メーカーの再生支援まで、事業再生にも多くの経験を有している。
2003年4月に株式会社産業再生機構代表取締役専務 業務執行最高責任者(COO)に就任。
産業と金融の一体再生を目指す産業再生機構において、事業再生のプロフェッショナル集団を率いた。
2006年4月郵政民営化委員会委員就任。
2006年12月資産債務改革の実行等に関する専門調査会委員就任。
2007年3月株式会社産業再生機構解散。
2007年4月長期・持続的な事業・企業価値の向上を目指し、経営支援サービスを提供する株式会社経営共創基盤を設立。
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by yurinass | 2008-02-29 08:34
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