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破産法を改正するとものづくり競争力は強まるか、弱まるか

 借金の実態と法的知識について,ある信販会社の取り立て部門の方が実例を基に解説していたWebサイトが以前ありました。「大夜逃げ学」という名称で,今でいうブログのようなコンテンツを掲載していましたが,2003年末ごろにトラブルがあったとみえて閉鎖されてしまいました。実例を基に解説,というよりは解説という名目で実例をしゃべりたかったというようなところがあって(私もブログではよく本末を転倒させます),あまりに実例を面白おかしく言いすぎてトラブルになったようです。そこで学んだことの一つが日本の破産法の背景にある考え方ですが,これが中小企業の競争力を阻害しているのではないか,という話をつい先日聞きました。

 このWebサイト,問題はあったかもしれませんが解説内容は根拠のあるもので,債権処理についてはずいぶん勉強になりました。それによれば,日本の破産法は破産者に対する懲戒的な考えを基本としていて「本来,債権者が債務者の資産をひっぱがして山分けするための制度」であって「100%債務者の更生のためだけにあるわけではない」のだそうです。ブログの開設者は取り立て側の人ですから,懲戒的な考えを好んでいるようでした。それについては賛否両論あると思いますけれども,取り立てる側の行動がよく分かるという点で,取り立てられる側の人にも参考になった内容だったと思います。

 私もマニア的興味を覚えて,あるとき「自己破産せずに借金を返す法」という本を購入しました。横道にそれますが,このような本を購入するときは,必要に迫られた場合でも単純に興味本位であっても,会社や自宅から離れた書店をご利用になることをお勧めいたします。私は会社のすぐそばの書店で購入してしまい,お金を払うまですぐ後ろに以前の編集部の同僚が並んでいるのに気が付きませんでした。書名を見られたかどうか正確には分からない,というか確認する気にもなれませんでしたが,もし見られていたら「こいつ,借金漬けなのか!!」と思われるのは必至です。

 先日,米カリフォルニア州サンディエゴ在住で一時帰国していらっしゃる金型技術者のKさんにお会いしました。Kさんの実家は東京都文京区で彫刻加工の会社を経営していて,Kさんは2代目に当たる方ですが,2001年に会社を自主廃業(確か任意整理に当たると記憶しています)した経験をお持ちです。現在は金型の知識を駆使してさまざまな仕事をしていらっしゃいます〔ここまで書くとこの方がだれか,知らない人にまで分かってしまうと思います。実はご本人には実名を出してもよいと言われていますが,一応ブログなので慣習(?)に従ってイニシャルにします〕。

 会社を整理するときに,Kさんは同業者をはじめとした知り合いや,果ては出版社の編集者に至るまで,技術者のリストをメールなどで発送しました。約20人いた技術者の専門分野,経験年数,年齢などをまとめたリストで「このような人材に興味があったら連絡してほしい」という内容です。私たちははっきりいってお役には立てなかったのですが,何倍もの求人が来て全員が転職できたとのこと。むしろ,東京近郊から文京区に通っていた方の多くは,勤務地が自宅により近くなったそうです。「企業数は一つ減らしたが,国内産業の規模(従事者数)を減らすことにならなかったのが救い」とKさんはおっしゃいます。

 Kさんが会社をたたんだ理由は「コンピュータが普及したら,人手ではやっていけないと思った」ことだそうです。Kさん自身,3次元CAD/CAMには非常に早期から取り組んでいましたが,それは同業者が先にコンピュータを使ったら自分たちは生きていけなくなる,という危機感があったためのようです。しかし結局,採算を取ることは非常に難しくなり,1代目であるお父様の同意を得て,倒産あるいは破産する前に自主廃業に踏み切りました。当時私たちは内心,短絡的ではありますが「コンピュータを頑張って導入しても,実はものづくりに役立たないのか」と思ってしまったものです。

 そのKさんは「今の破産法では,会社を倒産させた人は身ぐるみ剥がれてしまう。せめて自宅とクルマくらいは持てるようにするべきではないか。そうでないと,本来なくなるべき会社がムダな努力をしてしまう」とおっしゃいます。会社が倒産すると,従業員もさることながら経営者は大きな負債を抱え,破産せざるを得ないなど最低限の生活しかできない状況に追い込まれます。そうなるのを避けようとして,低空飛行でぎりぎりまで粘る度合いが米国などに比べても強い。無理を重ねる結果「価格破壊に走ってしまう」(Kさん)。そうすると受注単価の相場が下落し,周囲の健全な同業者まで利益が圧迫され,危機に直面させられることになります。

 「がん細胞っていうのは,本来死ぬべき細胞が死なない状態になったときのことを言うんだそうですね。だから本来つぶれるべき会社がいつまでもつぶれないっていうのは,がん細胞と同じなんですよ」(Kさん)。表現はきついのですが,真理はあると思いました。だから日本の破産法にある懲戒的な考え方を緩める方が,つぶれるべき会社をつぶすことにつながり,産業全体の競争力も維持しやすい,というわけです。同時に,会社をつぶした人には再挑戦しやすい環境を与えることにもなります。

 苦しいときに努力して粘ること自体が悪いとは言えません。「米国では会社は金儲けの手段でしかないから,具合が悪くなったらすぐにやめてしまう。日本の中小企業は,会社は経営者にとってわが子同然だから,非常にあきらめが悪く,何とかしようと頑張る」と政策研究大学院大学の橋本先生のご講演でお聞きしました。新技術を開発したりカイゼンを重ねて合理的にコストを削減したりと,発展的な方向に粘って不況を乗り越えた中小企業の存在が日本の競争力につながっていることは,これはこれで事実でしょう。

 ただ,そういった研究開発やカイゼンは会社がいよいよ危機に瀕しているときは難しく,裏付けもなくダンピングに走ってしまいがち,という指摘はうなずけます。退き時が難しいのは会社経営に限らず,戦争でもスポーツでも,古今東西永遠のテーマと言えましょう。もし破産法を改正して債務者更生の考え方を強化したら,日本の中小企業の競争力は高まるのでしょうか,それとも弱まるのでしょうか?
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by yurinass | 2008-02-27 08:13
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