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迫られる“ねじれ会計”の解消 (上)

連結海外子会社と日本本社の会計方針は統一、を義務化

 年が明けてもいまだに話題に上る『ミシュランガイド東京(MICHELIN GUIDE TOKYO)』。この本の発売直後、「フランス在住のフランス人調査員と日本在住の日本人調査員と、異なる食習慣や生活環境で育ってきた調査員が、同じ基準で料理を評価できるのか」という趣旨の疑問が投げかけられた。

 味覚は人それぞれの面もあり、絶対的な評価というものは成り立ちにくい。こうした中で、誰もが納得できる評価をするならば、世界の料理に精通する特別な訓練を受けた調査員が世界を飛び回り、同じ舌で各国のレストランの味を比べるのが妥当かもしれない。

同じグループなのに、別々の会計基準で合算は妥当?
 統一の基準ではなく、複数の個別基準を組み合わせた評価は、果たして参考になるのか。実は、同じような疑問が日本の会計基準に対して、世界から投げかけられてきた。日本の会計基準では、連結財務諸表を作成する際に、日本の本社や国内のグループ会社は日本基準で、フランスの販売会社はフランスの国内基準ないしは国際会計基準で決算をすることを容認しているからだ。

 本来ならばフランスの販社も日本本社と同じく日本基準で連結決算を作成した方が、同じ取引なのに評価の仕方が異なるという“ねじれ”を避けることができる。例えば、Aという製品の棚卸し資産を本社では簿価で評価しているが、フランス販社では低価法で評価するといった事態は起こらない。

 統一した会計処理に基づいて連結決算書が作成されることは、投資家など社外のステークホルダーにとっては、その会社の現状を知るのに、それぞれの国の決算処理を把握するといった労力をかけずに済む利便性を持つ。実際、米国のSEC(証券取引委員会)基準や国際会計基準では投資家保護の意味も含め、連結会社の決算書は1つの基準で作成することを義務づけている。

 米国企業の場合、米国本社がSEC基準を採用しているならば、子会社の日本法人もフランス法人もSEC基準に直して連結用の決算書を作成しなくてはならないのだ。仮にこの米国本社の日本法人はSEC基準で決算を作成しているが、フランス法人はフランス基準で決算を作成していれば、フランス法人を連結する際に、SEC基準に評価し直すことになる。

 連結財務諸表の会計方針の統一とは、それぞれの国で活動している企業は、その国で義務づけられている会計基準で決算を作成するが、連結財務諸表を作成する際には、活動している国で義務づけている決算処理とは異なり、連結グループの方針に基づいた会計処理をするということになる。

例外規定を利用して不統一を続けてきた日本企業
 このように連結財務諸表の作成のために会計方針を統一することを、実は日本基準もSEC基準や国際会計基準と同様、原則は義務づけている。しかし、日本公認会計士協会が会計実務における指針として出した文書の中で、ある条件の下では会計処理を統一しなくても可、としてきた。この例外規定を根拠に、多くの日本企業は、在外子会社の会計方針を統一しないまま連結財務諸表を作成してきていたのだ。

 その例外規定は、日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会報告第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査上の取扱い」という文書の中にある。この第56号には、日本の親会社と海外の子会社の会計処理が異なることが、「明らかに合理的でないと認められない限り、当面の間は親会社と子会社との間で会計処理を統一する必要はない」という趣旨の内容が記載されている。

今年4月1日以降は、統一を義務づけ
 しかし、2008年4月1日以降に開始する決算年度からは、この56号の例外規定が通用しなくなる。というのは、日本の会計基準を設定する財務会計基準機構の企業会計基準委員会(ASBJ)が、昨年5月に公表した実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」で、今後は原則として在外子会社の会計処理を統一しなくてはならないことを示したからだ。

 この第18号の規定を作成したASBJは、国際会計基準の設定主体であるIASB(国際会計基準理事会)と国際会計基準とのコンバージェンス(共通化)を話し合う日本側のカウンターパートだ。そのASBJが示したことから分かるように、今回の在外子会社の会計処理の統一は、国際会計基準とのコンバージェンスを巡る動きに対応したものだ。

 ASBJが第18号規定を示したことで、原則として、日本の本社もフランスの販社も中国の販社も同じ会計方針で決算書を作成しなくてはならなくなった。日本本社が日本基準で連結決算書を作成するのであるならばフランスや中国の子会社も日本基準を採用する、日本本社がSEC基準で連結決算書を作成するならばフランスや中国の子会社もSEC基準を採用する。

国の基準だけではなく、個々の取引も統一必要
 ここで注意しなくてはならないのは、連結財務諸表作成上で会計処理の統一とは、日本基準や国際会計基準、SEC基準のように国や地域ごとに異なっている決算書の作成基準を統一することに、とどまらないということだ。基準の統一に加えて、同じ状況下で行われた同じ性質の取引であれば、国の違いに関係なく同じ会計処理が行われなくてはならない。

 例えば、システム販売を行っている企業グループがあったとする。日本本社や米国法人ではシステムを顧客に引き渡し、設置が完了した時点で売り上げを計上しているが、中国の販社だけはシステムを出荷した段階で売り上げが計上されている、というのであれば会計処理は統一されていないことになる。この場合、中国の販社の売り上げを他国と同様に、顧客に設置が完了した時点で計上し直す形に修正しなくてはならない。

取引の性質に着目
 ここで注意しなくてはならないのは、統一するのは同じ性質の取引ごと、ということだ。上の例で、システムの売り上げの計上基準を統一したからといって、その他の違う性質の取引の売り上げ計上もシステムと同じように顧客に引き渡した時点にしなくてもかまわない。

 例を使って説明すると、先の会社がコンサルティング事業を開始したとする。この場合、コンサルティング事業の売上計上時期は、顧客に報告書を提出する時点でも、顧客が報告書を了承した時点でも可能だ。仮にこの会社が報告書を提出した時点を世界統一の売上の計上時期とした場合、先ほどのシステム事業の例では出荷時点と同等と言える。

 そうなるとシステム事業とコンサルティング事業とで売り上げの計上時期が異なるが、これによって会計処理が不統一である、とは言わない。2つの事業は同じ性質の取引ではないので、会計処理の統一の対象ではないのだ。このように会計処理の統一は、取引の性質ごとに対応しなければならない。

 その詳細は先に述べたASBJの実務対応報告第18号に記されている。以下、第18号に沿って会計方針の統一のより具体的な内容を説明するとともに、会社が準備すべきことは何なのか、その他の新基準とどのような関連があるのかを、順に見ていきたい。

第18号から読み取れるポイントは、1 どういう取引を統一するのか、2 どのように統一するのか、の2点だ。


1 どういう取引を統一するのか

 先ほどの例で説明したように同じ環境で行われた同じ性質の取引が統一の対象だ。ただし、何を「同じ」とするかについては連結グループで認識を統一して、文章で明らかにしておくことが必要だ。決算を作成する担当者ごとに判断がまちまち、というのでは会計処理を統一したことにならない。会計方針の統一の前提には各社の担当者の正しい判断が必要で、そのためにきちんと整理しておくことが必要だ。

 例えば、営業に関係する売り上げや仕入れといった取引であれば、まずは事業のセグメントごとに分類する。そのうえで、販売方法や仕入れ方法の類似性とか、販売市場や購買市場の類似性で取引を細分化し同じ性質の取引の定義を決めていく。

 営業とは直接に関係しない取引はセグメントごとに分類しても無意味なことが多く、例えば役員退職慰労引当金の計上などはすべての会社の取引が同じ性質の取引として考えられるケースが多い。この場合は、各社の内規に基づいて計算された全額を計上するという処理に統一する、といった方法が考えられる。


2 どのように統一するのか

 会計方針は日本基準に統一するが、そのやり方に原則的な方法ともう1つ認められている方法がある。原則的な方法とは外国の子会社の決算書を日本基準で作成するという方法だ。現地で作成された決算書が日本基準でない場合には、日本基準と異なる部分を修正するのでもよい。結果として日本基準で決算書が作成されていればよいのだ。

 もう1つの方法は、国際会計基準または米国基準で作成した決算書をベースに、特定の6項目について修正を行ってから連結用に使用する、というものだ。多くの会社がこちらの方法を選ぶと思われるので、6項目に関しては後ほど説明する。現在、日本基準と国際会計基準等のコンバージェンスも進んできており、特定6項目の差異を除くと、通常は重要な影響額が出るような差異がないのだ。

 それでは、海外の子会社が日本基準でもない、国際会計基準や米国基準とも違う所在地の会計基準で決算書を作成している場合はどうすべきか。日本基準に修正するか、または国際会計基準か米国会計基準に修正した後、特定の6項目を修正する方法が考えられるが、いずれの方法でも各国会計基準をしっかり把握することが必要なため労力が必要だ。その詳細は次号で見ていく。
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by yurinass | 2008-01-24 07:50
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