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大手ネジメーカー「ヤマシナ」(本社・京都市)が発行した新株予約権を利用し、投資額の10倍もの利益を上げる仕組みに投資した関東、関西、東海地方などの約15の個人、企業が東京、大阪、名古屋などの国税局の税務調査を受け、総額で約30億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。仕組みは証券アナリストが主導し、株主総会の特別決議を経て10株を1株にする手法で利益を上げていたが、利益を少なく計上するなどしていたという。追徴課税は約10億円になる模様だ。
図 新株予約権での利殖の仕組み グラフ ヤマシナの株価の推移 国税当局が第三者に割りあてられた新株予約権で得た利益に対し、申告漏れを指摘したのは初めてという。他にも投資家がおり、全体で40億円を超える申告漏れの疑いが持たれている。 国税局は「利益は会社再建を目的にした投資などの対価で、『雑所得』にあたる」と認定した模様で、「利益は偶発的」として、税額がほぼ半分の「一時所得」で申告したり、「株を売っていない」などと申告していなかった投資家らの主張を退けたとされる。 問題の仕組みは、東京の証券アナリストが企業再生のための増資としてヤマシナに提案。同社は新株1株が22円の新株予約権を発行し、併せて10株を1株にする「株式併合」を行った。株価は200円前後に上がった。有利な条件の新株予約権と併合には株主総会で出席株主の3分の2以上が賛成する特別決議が必要で、手続き的には法律に沿って行われた。投資した会社社長や自営業者が仲間内での情報などで仕組みに参加していた。 関係者によると、株式併合に先立ち、東京に設立した「エトナ1号投資事業組合」が大量の株式を保有して筆頭株主になった。 さらに名古屋市に設立した「エンジェル1号投資事業組合」に対して05年8月から、投資家らに総額約25億円の投資をさせた。アナリストは二つの組合の設立に関与した。 株式併合後、同組合に割り当てられた新株予約権を使い、投資家らは06年3月までに新株約1億2000万株を1株22円で取得。併合直後の株価は226円で、一時300円を超えた。株の取得時との差額が利益として国税局に認定されたという。 信用調査会社によると、ヤマシナは大証2部上場で1917年設立の大手鉄ネジメーカー。 仕組みについてアナリストは「法的に問題がないかチェックした。法律事務所にも確認した」と話す。ヤマシナは「新株予約権発行などの特別決議を受けており、問題はない」としている。 ◇ 〈新株予約権〉 企業が発行する株式を一定の期間内に、あらかじめ決められた価格で取得できる権利。資金調達や買収防衛などに利用されるケースが目立つ。これまでは投機性が高いとして、役員らに報酬などとして発行されるストックオプション(自社株購入権)や新株引受権付社債(ワラント債)などに限られていたが、02年4月の商法改正で自由化された。
by yurinass
| 2008-01-01 01:23
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