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中小企業の戦略を考える(15)

 □(社)全国地方銀行協会理事・事務局長 岸秀志氏

 ■リスク大きい「経営者=研究者」

 現在、全国に地方銀行(地銀)は109行ある。歴史的経緯から全国地方銀行協会加盟64行、第二地方銀行協会加盟45行に分かれる。40年に亘り地域金融業界をみてきた岸秀志氏に聞いた。

 ≪企業価値が集中≫

 中小企業やベンチャーは、知財を評価することによって行われる円滑な資金供給を金融機関に期待する。だが、「金融機関の仕事はリスクをとること」だ。万が一のケースを考えることから入る。

 例えば、経営が行き詰まった企業に融資をしていた金融機関が協力して事業再生を図る場合、まず行われるのは経営者責任を取らせることだ。しかし、「規模の小さな企業の場合、経営者の存在が企業のすべてという場合が少なくない。中小企業などの事業再生が難しい理由」だ。これは中小企業融資で個人保証が多い理由にも関係する。

 「社長が唯一の技術者、特許権者である場合、社長を辞めさせた瞬間に企業価値は減少してしまうだろう。その社長の頭の中にしかない技術やノウハウだけでその企業が成り立っている場合、知的資産や知財はゼロになるかも」しれない。だが、「責任を取らせないことには再生支援はありえない。技術や知財を担保に融資をするというが、現実にはこのようなリスクがある」と指摘する。このリスクを埋めるには、知財担保を明確化しておかねばいけない。

 逆に言えば、卓越した技術力を売り物にして融資を受けたいなら、経営者がクビを切られても「技術力は企業にしっかりと残る状態になっていないといけない。できれば技術開発型ベンチャーなどは研究者が経営者となるのではなく、経営者と研究者は最初から別々にしたほうがいいだろう」となる。

 研究データや特許権、ノウハウなど知的財産は企業の所有資産となっており、活用・処分できる状態でなければいけない。大学発ベンチャーなどでは教授が経営者や役員になる場合が多いが、金融機関から見れば、資金を提供するにはリスクが高い体制だということになる。

 ≪金融庁の変化≫

 ひところ、知財担保融資が注目された。「地銀業界でも研究し、いくつかの銀行が挑戦してきたが、なかなか難しく、ノウハウはまだそろっていない。技術が分かる人材も少ない。技術評価を行うための外部委託費用も安くはない」とする。「預かった知財担保の処分市場も見えない。そういう意味では、知財担保へ行く前に、動産担保の研究、実践が金融機関にとっては先に来る課題だろう」と言う。

 しかし金融機関を監督する金融庁は今後、“個人保証・不動産担保に過度に依存しない融資”を金融機関が拡大することを要望しており、その実績推移をモニタリングして一般に開示していく方針だ。一つの方法として、知財担保融資も視野に入っている。また「特許、ブランド、組織力、顧客・取引先とのネットワークなどの非財務の定性情報評価を制度化した、知的資産経営報告書の活用”を促していく姿勢にある。

 「金融機関がさまざまな融資対応を実践していくうえでは、それが可能なスプレッドが取れるようになることが必要だ」と強調する。スプレッドとは貸し出し金利から預金金利と経費を差し引いた利ざやのことだ。2006年度の国内預貸金利鞘の平均は、地銀協加盟行が0・66%、第二地銀協加盟行が0・80%。海外の金融機関の3分の1もない状況だともいわれる。

 「現在の低金利下では、スプレッドの幅が小さいので、優良な企業もそうでない企業も金利差があまり生まれない。これで健全な状態とはいえないだろう」。つまり、今後、金利が上昇局面に入ってこそ、金融サービスの提供方法も多様化しやすくなるということだ。

「いつの間にか、金融機関が利ざやを得ることが悪いことのように言われるようになってしまった。企業も金利の安さで取引先金融機関を安易に替えてしまう。しかし、金利だけで誘う金融機関はしっかりと経営を支援してくれるとは思えない。企業も地域金融機関との取引の意味をぜひ再考してほしい」と訴える。
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by yurinass | 2007-07-13 09:04 | 経済状況記事
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