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米金融市場カネ余りの実相(下)相場形成、「新人類」が席巻、忍び寄る企業破綻の足音

 一月末、経営破綻したデルタ航空の債権者説明会。七十三歳のジェラルド・グリンスティン最高経営責任者が再建への道筋を順を追って説明しようとしたところ、三十歳そこそこのヘッジファンド運用者が突然さえぎった。「カネはふんだんにあるんだ。細かい経営の能書きは聞きたくない」
 債権を高値で引き取ってくれる先はいくらでもある。長期保有する気はないから、長話を聞かされるのはごめん、というわけだ。
 「今のヘッジファンドには大学を出たばかりの若者があふれている」。投資銀行グリーンヒルの首脳は、現代米国版の「新人類相場」にとまどいをかくさない。「彼らは企業破綻が相次いだ一九九〇年代初めを知らない。リスクを忘れて買いまくっている」
強気の借り手側
 カネ余りは借り手と貸し手の力関係も変えた。「金利を〇・二五%下げてもらいたい」。一月末、ある金融機関に突然の要請があった。ベイン・キャピタルなどファンド連合が病院チェーンHCAを総額三百三十億ドルでLBO(レバレッジド・バイアウト)した案件での一幕だ。必要資金を金融機関から借り入れる予定だった買収ファンドが、直前に融資条件の変更を要求。しかし、金融機関側は「それでも貸したい」と、受け入れた。
 LBOは本来、リスクの高い融資案件だが、カネ余りと金融緩和に支えられ、昨年の債務不履行(デフォルト)率はわずか〇・八%。金利も従来は米国債利回りに六―八%上乗せしていたが、今は二%程度だ。
 エネルギー取引の失敗で昨年秋、ヘッジファンド大手アマランス・アドバイザーズが破綻したが、「影響は見られない」(ドイツ銀行のジョン・ダイメント氏)。同行の機関投資家調査では、今年のヘッジファンド投資額は昨年比一割増える。アマランス出身者は早くも業界に復帰、後遺症らしきものは見えない。
借入金依存強く
 とはいえ、さすがに警戒感も頭をもたげる。
 「米国での住宅ローンの焦げ付きが発端となり、いずれ新興国市場の相場下落が起きるのではないか」。メリルリンチのストラテジスト、デビッド・ローゼンバーグ氏は最近、頻繁にこんな質問を受けるという。米国では、一部の住宅ローン会社が、返済能力の低い低所得者層に貸し込んだ融資を回収できず破綻し始めた。リスクを嫌ってマネーの逆流が起きれば、まず影響を受けるのが未成熟な新興国市場という理屈だ。
 ニューヨーク大学のエド・アルトマン教授は「信用度の低い債券発行が急増し一部企業の借入金依存が強まっている。金利や景気動向からみて来年には企業破綻が増え始める」と読む。
 九〇年代後半から、米欧金融機関はリスク資産を積極的に外部へ売却、「クレジット・デリバティブ」といった高度な金融商品が急膨張した。一月のダボス会議などでは、ヘッジファンドへの規制を求める声が相次いだが、規制当局もリスクがどこにあるかを正確に把握できずにいる。
 「自分が持っている株は売り始めたよ」。ニューヨーク郊外に住む四十歳代のUBSのトレーダーが明かす。株高の楽観に染まる米市場だが、静かにマネー回収の動きも出始めている。
(日本経済新聞)
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by yurinass | 2007-02-25 07:34 | 経済状況記事
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